(この記事は約7分でお読み頂けます。)
最近革靴にハマって磨いたり補修したりしている中、こんなご質問を頂きました。
「お気に入りの靴の踵がすり減ってしまったのですが、良い修復方法はないでしょうか。ヒール交換も考えましたがあまりに高いので...。」との事。
私は靴屋さんではありませんが、いくつか試した中で是非オススメしたい方法がありますのでご紹介し致します。
よろしければお付き合いください。
踵を削らないように歩くのは不可能?
なぜ踵が削れるのか。
「それは歩くからでしょう!」
なんて言ったらその通りですが、もう少し専門的にご説明しますと、健康な方の歩行ではまず一番最初に踵が地面と接する瞬間から始まるからです。
踵から着くのでHeel StrikeあるいはHeel Contact(踵接地期)とか、もしくはInitial Contact(初期接地)なんて呼ばれたりもします。
これは衝撃を緩衝するとともに歩行の推進力を生み出し、地面の環境を評価する役割があります。
この瞬間に靴の踵がすり減っていくのです。
厳密にはその他要素もありますが、ここでは割愛...。
また面白いのが、人によって身体のクセがあって左右の足で微妙に歩き方が変わってくるのです。
左右の足で靴の削れ方や、スレが出来る部分が違うのはその為ですね。
ちなみにですが、足首を上に持ち上げる筋肉が適切に使われていなかったり、歩幅が短すぎたりすると踵ではなく足底から地面についたり、平地なのにつま先を引っ掛けたりします。
だから履き古した靴を見るとその方の歩行状態が分かる、というのはさて置いて...。
つまりは、踵がすり減らないように歩くのは無理だという事です。
踵以外の接地から始まる歩行は、身体のどこかにストレスをかけてしまうのでおすすめはしません。
踵補修のロジック
踵の消費は仕方がない。だからこそ直すのです。
踵を直す方法はたくさんあります。
お店に注文すればオールソールやヒールのみ交換・補修等の方法が選択できます。
私のALDENのVチップはお店でヒールのみ交換してもらいました。
かなり高額でしたが...。
【2018.10.28追記】
インターネットで踵の補修を以来できるサービスを使用した記事を投稿しました。
興味のある方はこちらの記事もお読みいただけましたら幸いです。
しかして今回のタイトルにもあります通り、お安く補修を図ります。
というわけで今回はセルフでの補修の方法を選択していきます。
補修を図る
準備するもの
- シューグー
- クリアファイル
- マスキングテープ
- ハサミ
- ヤスリ
- 靴のケアセット
シューグー以外どれも100円で揃えられるので大変安価に済ませる事が可能です。
補修方法
今回は知る人ぞ知るシューグーを使用した補修方法です。
今回使用するこのシューグーはチューブから出す時には粘性のある半液体の物質、固まった後は硬めのゴムのような材質になります。
ただ半液体ということと、固まる際に大きく縮むために補修が難しいものです。
そこで、多めに補修剤を塗ってしまい、いらない部分をハサミとヤスリで整えてしまおうというのが今回の方法です。
見た目を気にしないなら満1〜2日。
見た目を美しく仕上げるなら3日程度で補修可能です。
補修手順
1.現状の確認
今回補修する靴は1970年台FLORSHEIMのビンテージウイングチップです。
現状はこんなかんじです。
かなりぶ厚いヒールですが、使用によって削れて積革部分まで到達しています。
削れは8mm程度でしょうか。
2.塗りたい部分以外を覆う
さて、さっそく補修していきましょう。
写真の撮り忘れ等で、補修過程の靴が変わったりしてますがお許しください!
シューグーがくっついて固まってしまうとなかなか剥がれなくなってしまうので、侵食されたくない部分をマスキングテープで覆います。
面倒ですがこの作業がとても大事。
仕上がりの美しさがとても変わってきます。
3.クリアファイルを切って型をつくる
クリアファイルを細長く切ってコバの外周にあわせます。
踵側へ延長するくらい大きめに作る事をお勧めします。
ぴったりと張って、マスキングテープでコバに止めます。コバの塗装剥がれはコバインキやワックスで補色出来るので問題ありません。
4.シューグーを流し込む
出来上がった型と踵へシューグーを流し込みます。
強度的にも隙間が無いように流し込むのが好ましいと思います。結局収縮してガタガタになってしまうのですが...。
クリアファイルの型にいくらくっついても固まったあとにハサミで切れるので問題ありません。
踵を埋めたら12〜24時間放置します。
5.シューグーの重ね塗り
固まった事を確認し、クリアファイルの型とマスキングテープをはがします。
意外と収縮するものですよね。隙間なく埋めたはずの踵にも窪みができています。
見た目を気にしない方ははみ出た部分をハサミで切ってしまえばご使用いただけます。
見た目を気にされる方は、ここからはもう一度上塗りしていきましょう。
侵食されたくない部分にマスキングテープテープを張り、えぐれた部分に再びシューグーを注いでいきます。
写真が違う靴に変わっていますが、こんなかんじでモリモリで大丈夫です。
固まるまで12〜24時間放置。
6.整形
乾燥後にハサミやヤスリ等を使ってコバ周囲と踵の平面を整形しましょう。
7.完成
整形できたら、コバにコバインキやワックスで補色したら完成です。
ビフォーの踵がこちらでした。
そこそこ綺麗に補修出来たのではないでしょうか。
コバはワックスをつけて磨く事でさらに馴染むと思います。
歩き心地はレザーソールとラバーソールの間のような感じでしょうか。
程よく緩衝作用が聞いているので消音的な意味でも個人的には結構好きです。
高貴な靴のコツコツ音が好きな方はあまり気に入らないかもしれません。
その他補修例
ここでは上記の方法で補修した例を3件程度ですが貼っていきます。
白色のシューグーを使ったものもありますので色味の参考にしていただけたら幸いです。
①Paraboot - CHAMBORD
District UNITED ARROWS別注のビブラムソール仕様です。
ビフォー。もはや1cm以上削れています。
アフター。もうちょい盛ってもよかったか。
余談ですが白いアウトソールの汚れは、除光液を塗布した布等で磨けば取れます。
上のシャンボードではセリアの除光液を使いました。オススメです。
②ALDEN - 53713 Military Plain Toe Ox.
さきほど登場したこちらの靴。
ビフォーを撮り忘れてしまいましたが、どこまで補修したか分かりますか。
正解はこの赤い部分までです。
よく見れば補修の跡がわかりますが、実際に歩いている時には端から見ても気づかれる事はないと思います。
③Tricker's - ストレートチップシューズ
トゥモローランド別注のビブラム社ガムライトソール仕様です。
ビフォー。
アフター。
こういったやや黄色みのかかったソールでは相性が悪いようです。
履いている時にはわからないと思いますが、まじまじと見られると補修跡がまるわかりです。
あとがき
補修工程を見ていると非常に面倒のように見えますが、待っている時間ばかりなので対して面倒ではありません。
慣れるとより早く美しく作れるようになります。
上の商品のような一般的なヒール形成済みの踵補修剤を使えば良いのでは無いかと声が聞こえてきそうですが、先述の通り人によって削れる部分は違うという差があります。
その点、半個体のシューグーを使えばどんな削れ方をしても補修できるメリットがあります。
コスパも良いですしね!
強いて言うならカラーバリエーションが少ない点が気になるくらいでしょうか。
カラフルなヒールやコバの色に対して、顔料を混ぜたシューグーで補修出来るのか今度試してみたいと思います。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。
【2018.2.25追記】
「シューグーS」という5分で固まる商品もあると教えていただきました。
さらなる時間短縮にお役立てください!