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【60度24時間】低温調理で豚肩ロースを柔らかいステーキに

(この記事は約9分でお読みいただけます。)

 

 

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低温長時間加熱で豚肩ロースも柔らかく。

 

 

我が家で大活躍のヨーグルトメーカー。

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そんなヨーグルトメーカーを使い、過去に鶏ハムを作りました。

www.satanokoe.com

鶏ハムを作るにあたり調べ物をしていた最中、非常に気になる記事を見つけます。

note.mu

固くなりがちな豚肩ロースを60度で24時間加熱し柔らかいステーキとしていただくという記事です。

これはいつか試してみたい!なんて思えど、こんな豚肩ロースのブロックなんて買ってくる機会は滅多とありません。

 

そう思っていた矢先...。
使うのを忘れていた豚肩ロースを冷蔵庫から発掘しました。

そもそも買ったかな(?)

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こんなチャンスは滅多とありません。

ドリップが出てしまっていますが長時間加熱するので問題ないでしょう。

ヨーグルトメーカーとは名ばかりの「温度調節器」を用いて、我が家の食卓を華やぐ挑戦が始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

なにゆえの”低温”加熱

低温で加熱するメリットを改めて確認します。

www.satanokoe.com

当ブログの鶏ハムの記事から文章を流用します。

 

肉は主にミオシンアクチンとコラーゲンと呼ばれるタンパク質で構成されています。
(具体的にはもっともっと細かい分類がありますが、当記事では不要な為、簡素化した分類にて記載させていただきます。)

ミオシンアクチンは柔らかいタンパク質であるのに対し、コラーゲンは硬質ゴム様のタンパク質です。
火を通しても柔らかい状態にするにはこれらタンパク質を程よく熱変性させる必要があります。

では、どれくらいの温度で調理すれば良いのでしょうか。

 

この長年の疑問に対し、ジェフ・ポーター著「Cooking for Geeks」にて1つの解が提示されました。

 

「ヒトは食べた時にミオシンは変性しているが、アクチンは変性していない状態を美味しいと感じることが多い。」

なるほどなるほど...!

あとは具体的温度が分かれば調理しやすくなります。

 

有益な情報を活かすべく、いくつかの文献・HPをもとに加熱温度による食肉の変化を以下の図にまとめてみました。

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参考:Jeff Potter「Cooking for Geeks」、Cooking Maniac「http://cookingmaniac.net/archives/26008473.html」、日本食肉消費総合センター「http://www.jmi.or.jp/recipe/cooking/yaku_main5.html

 

pHや環境温度・湿度、文献・HPによっては多少異なる数値が出てきますが、おおまかにはこのような変化が起こるようです。

上図の通り、ミオシンは50℃、アクチンは65.5°から熱変性を開始します。

ミオシンが変性を開始する50℃では、グニッとした生肉様の食感からブツッと歯切れの良い食感に変化します。
アクチンが変性を開始する65.5℃では収縮するとともに水分(肉汁)を放出します。

加熱温度が上がるほどにこの2つのタンパク質は変性が進み、肉は固くなっていくのです。
フライパンで肉を焼いた時に硬かったのは温度が高すぎたんですね。

となると、「Cooking for Geeks」にて提示された美味しいと感じる状態「ミオシンが変性を始める50℃ギリギリの温度」で攻めたくなりますが、ここでキーとなるのが食中毒菌の死滅温度です。

 

 

 

 

 

なにゆえの”長時間”加熱

下図は各細菌の殺菌温度と時間の関係性です。

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゛食品衛生の豆知識 -微生物対策編-゛イカリ消毒株式会社

https://www.ikari.co.jp/topics/professional15.html(画像引用 2019-02-10)

細菌数が1/10になる加熱時間をD値と言いますが、このD値まで十分に加熱して殺菌しなければ衛生的に不安が募ります。

ご覧いただくと一目瞭然ですが、ミオシンが変性する50℃ギリギリに温度設定したとしても殺菌しきれないのが現実です。

それどころか、食中毒菌は約30℃~40℃の間で最も活性化し増殖します。
低い温度で加熱時間が短い場合、中心部まで加熱しきれず食中毒菌が増殖する事も考えられます。

ジェフ・ポーター著「Cooking for Geeks」では、先の熱変性の話に加え殺菌の意味も兼ねて58℃から65.5℃を肉の調理に理想的な温度としているようです。

 

 

 

加熱のまとめ

これら長い長い話を纏めると以下の通りです。

  • ミオシンは変性しているがアクチンは変性していない状態を美味しいと感じやすい。
  • ミオシンは50℃、アクチンは65.5℃で変性開始する。
  • 肉の中心温度を食中毒菌の死滅温度まで上げる事が推奨される。
  • D値になるまで中心温度を保ち続ける事が推奨される。

 

このまとめを参考にする事で、加熱温度と加熱時間を決めることが出来ます。

加熱温度は中心部が58℃(60℃)~65.5℃になる程度。
加熱時間は細菌の死滅温度でD値を超えるまで。

美味しさを求めて低い温度で調理したい方は必然的に調理時間を延ばす必要があります。

以前鶏ハムを作った際には64℃設定で4時間程度の加熱しましたが、今回は先のNoteを参考に60度設定で24時間加熱します。

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実際に作ってみる

さっそく作っていきましょう。
手順は鶏ハムを作った時と9割方変わりません。

手始めに豚肩ロースに下味をつけてジップロックに入れます。

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今回下味にはクレイジーソルトを使用しました。
加熱ムラにならないように、可能な限り空気を抜きます。

 

次にヨーグルトメーカーに付属してきた容器に入れお湯で満たします。

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あとはヨーグルトメーカーにイン。

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先述の通り60度で24時間の加熱です。
低温調理はこの間に放置しているだけで良いのが魅力的ですよね。

私のような怠け者にはもってこいの調理方法です、すき。

 

閑話休題。
24時間後にはこんな感じになりました。

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美味しそうな豚の香りが広がります。

肉汁がやたらと出ていますが、塩気が多すぎたでしょうか。

 

切り分けてみるとこんな感じに。

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うわー美味しそう!
僅かに赤身が残りながらもしっかりと中心まで火は通っているようです。

写真ではぱさついているように見えますが、指で押すと脂がジュワッと出てきます。

この時点で齧り付きたいのをグッと我慢してもうひと手間。
参照したNoteの通り、表面に焼き目を付けてステーキとしていただきます。

焼いた際の焦げ目はメイラード反応と言われ、香りや旨味を増進する効果があります。
しかし温度が高いとアクチンが変性して固くなってしまうため、あくまで焼き目をつけるだけが目的となります。

フライパンに油を少し入れて高音でさっと焼く。

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美しいきつね色になりました。
これにて完成です。

 

少々厚切りにしましたが、ナイフでつついただけでもホロっと崩れてしまうくらいの柔らかさです。

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焼き目をつけたのも正解です。
口元まで持ってくる時に香ばしさを感じ、咀嚼をする際には甘みを感じます。

焼き目をつけない状態で食べた際にはこれらが減衰していたので、メイラード反応の恩恵さまさまでしょう。

冷蔵庫の奥で眠っていた豚肩ロースとは思えない状態になったのではないでしょうか。

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あとがき

下味をつけてヨーグルトメーカーにインして放置するだけの簡単さは病みつきになります。
ズボラ飯としてはもちろん、ここからのアレンジとしてもレパートリーは広がるように感じます。

忘れてしまいそうですがヨーグルトを作る事が本来の用途ですが、こうも応用が効いてしまうと高価な低温調理機なんて必要ないのではなんて思えてしまいます(笑)

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今回作っている中で気になった点は、低温加熱後の肉汁。

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調べてみれば、予想通り下味の塩分濃度が問題との事。
下味は薄めに付けてさっと焼くときに塩気を足すのが良いらしいです。

あの肉汁が更に肉の中に閉じ込める事が出来れば、さらに柔らかく食べられる事が出来たようです。惜しい。

 

ズボラの中にも深みあり。
奥深き料理の世界をわずかに感じたのでした...。

豚肩ロースのブロックの処理にお困りの方は是非挑戦してみてください。

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最後までお読みいただきましてありがとうございました。