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コードバンはサドルソープで丸洗いできるのだろうか【+クラック補修】

(この記事は約9分でお読みいただけます。)

 

 

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コードバンは丸洗いできるのだろうか。

 

 

製造過程やその光沢感から”革のダイアモンド”なんて呼ばれるコードバンですが、水分にめっぽう弱い事でも有名です。

突然の雨に濡れてしまった場合にはコードバン全体を軽く湿らせるといった苦肉の策を取りますが、まるまる洗ったらどうなってしまうのだろうと常日頃から興味がありました。

 

いざインターネットで調べていても、ジャブジャブ水に付けながら丸洗いを記事にしているサイトはいま現在のところは1件もありません。

 

いつか試みたいなぁ思っていた矢先...。
ちょうど良い個体を友人から授かりました。

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某大手メーカーA社のチャッカブーツです。
バーガンディカラーのコードバン仕様、メーカーの代名詞といっても過言ではないモデルです。

遠目こそ見れば使い古したチャッカブーツですが、近距離で見て見れば使い古した以上のダメージがあらわになります。

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これは結構なクラックです。
履きシワ部分を中心にアッパー広範に認めます。

 

そして何よりカビ臭い。

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写真でこそこうして見ていられるものの実物は卒倒モノです。
リアルな匂いをお届けできない事を本当に残念に思います(?)

 

なんでも、中古で購入した個体をひたすら履き続け、濡れたまま冬季間倉庫で保存しておいたらこのような状態になっていたとの事。
状態が状態ゆえに破棄する事を検討していたようですが、せめて捨てる前に私に弄ってみて欲しいとの事でした。

いつから私は駆け込み寺的な存在になったのかという疑問はさておいて、興味のあったコードバンの丸洗いに挑戦してみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

状態確認とメニューの確認

補修していく前に、まずは状態を確認していきましょう。

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右足外側のクラック部。

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右足内側クラック部。

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後方。

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友人からはカビ臭さが取れれば何でもよいとの事でしたが、まじまじと見なくても分る広範のクラックとカビ臭さは看過できない部分です。
さらには古いクリームが乾燥して革表面はゴワゴワになっている部分も気になります。

 

状態観察から今回は以下のメニューにて手を加えていきます。

  • サドルソープで丸洗い
  • クラック部分の補修
  • 必要に応じてコードバン脱皮
  • トータルケア

この状態からどこまで是正されるでしょうか。

 

 

 

 

 

実際に修復していく

サドルソープで丸洗い

まずは丸洗いからやっていきましょう!

革製品丸洗いのお供と言えばこちら。

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M.モウブレィのサドルソープです。

コードバンに使うのは初めてですがどうなるでしょうか。
古いクリームを落とすほか、カビ臭さを消去できれば御の字です。

 

湯を張ったバケツにチャッカブーツを沈め、完全に水を含ませます。

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程なくしてびしょびしょに。

 

お次にサドルソープをブラシに付け靴を内側・外側も洗っていきます。

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いわゆる固形石鹸のようなものなので、取り出して使う事をおススメします。

 

泡立ちやすいサドルソープすらも抑えてしまうほどに汚れがこびりついているようです。

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赤褐色に濁った泡や水が汚さを物語っています。

飛び散る汚水にしかめっ面になりながら洗う事10分。
頑固であった汚れが取れてくると同時にサドルソープも泡立ちやすくなりました。

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泡もほぼ白色に。汚れも完璧に落ちたと願いたい。

この時点でカビ臭さは1割程度になりました。
サドルソープさまさまです。

この状態になったら軽く泡を流します。
なんでも泡を少し残すと革に潤いが残るのだとか。(サドルソープ公式情報)

 

あとはひたすらに乾燥を待ちます。

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靴乾燥器等の使用は急激な乾燥を招き、更に革を痛めかねないので自然乾燥が推奨されます。

 

乾燥終了。
古い汚れやクリームを剥いだらこのような状態になりました。

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乾燥により革はガサガサの状態です。
これは丸洗いをした際には避けられない事ですね。

しかし気になるのは色の変化。
洗う前よりもアッパーの色は濃くなってしまっているようです。

 

初めての試みとしてコードバンを丸洗いしましたが、カビ臭さと汚れを落とせた以外はむしろ悪くなってしまっているように感じます。
靴クリームの補色ではない、ナチュラルなバーガンディカラーを楽しみたい方には正直おススメできない結果に感じました。

 

...気を取り直して補修を継続していきます。

とりあえずの乾燥を防ぐためにシュプリームクリームを塗布していきます。

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少量をブラシでとり全体に伸ばす。

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不要なクリームをネル生地で拭けば綺麗になりました。

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光沢感は復活したものの、色はほぼ黒になってしまいました。

洗ったからこそクラック・小傷が顕著に見えるほか、色の濃さがどうしても気に食わないのでコードバン脱皮を行っていきます...!

 

 

コードバン脱皮とクラックの補修編

コードバン脱皮の概要についてはこちらをご覧ください。

www.satanokoe.com

要約すると、ヤスリでコードバン表面の凹凸をならしていく事で光沢感を蘇らせる荒業です。
また、以前バーガンディコードバンにて実施した際には顕著な色味の改善を確認しました。

【ビフォー】

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【アフター】

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結構な差でしょう。
今回はこの「コードバン脱皮」にクラック補修方法も併せていきます。

 

まずは240番というかなり粗目のヤスリで気になる箇所を擦っていきます。

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何度見ても焦る光景ですが、靴クリームの補色でいくらでも誤魔化せます。

ヤスリの粉を落としました。

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ここからはアドベースチューブを使用してクラックを埋めていきます。

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溢れるくらいまで埋めてしまっても問題ありません。

再びコードバンを脱皮していく過程で溢れた部分のみ削れていきます。

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次いでコードバン脱皮再開。
400番で全体を削っていきます。

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そして1000番。

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光沢感とともにバーガンディの透明度が戻ってきました。

 

粉を払えばご覧の通りに。

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最初と比較するとクラックは目立ちにくくなったのではないでしょうか。
多少の傷は先述の通り靴クリームの補色でごまかせるのでご安心ください。

 

 

トータルケア編

ここからはメンテナンス用品でケアをしていきます。

まずはデリケートクリーム。

少量取りブラシで広げ、ネル生地で余分なクリームを拭き取ります。

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クリーム類の中でも水分が多く浸透しやすいため最初に塗布するのが良いのだとか。

 

デリケートクリームの浸透を待つ間にアウトソール部分にも栄養を入れていきましょう。

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ソールモイスチャライザーを少量取りブラシで広げる。

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正しくはブラシで少量取りつつ伸ばすのが良いそうですが、私は面倒なので写真のように直接革底に垂らして使用しています。

十分に馴染んだらかっさ棒など固いもので押し込みます。

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これでソールの返りがよくなり歩きやすくなります。

 

次いで靴クリームを塗布していきます。

今回はコロニルシュークリームのバーガンディを使用。
濃い色が出てくれるので補色としては非常に強いクリームです。

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クラック部分も馴染んで目立たなくなってきました。

 

あとはワックスで気になる色ムラ部分をならしていけば完了です!

ワックスの中では非常に有名なサフィールのバーガンディを使用しました。

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まじまじと見ない限りはクラックが分からなくなったのではないでしょうか。

 

 


前後比較

さっそく補修前後で状態を確認してみましょう。

【ビフォー】

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【アフター】

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【ビフォー】

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【アフター】

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【ビフォー】

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【アフター】

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当初の鼻が曲がりそうな匂いは完全に消え、色合い・光沢感も僅かながら改善されたように感じます。

比較的美品の靴が揃う中に混じってもぱっと見ではわからないくらいまで状態改善しました(自画自賛)

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実はこの補修は2ヶ月も前の事でしたが、友人は大層気に入ってくれたようで、今も現役として履いてくれているようです。

 

 

 

 

 

あとがき

今回はサドルソープでの丸洗い、コードバン脱皮・クラックの補修、トータルケアとボリューミーな補修でした。

コードバンをサドルソープで丸洗いした感想としては、汚れ落としとカビ臭さの改善以外はあまりオススメはできない結果のようになりました。

いかんせん水を吸うコードバンなので色が数トーン暗くなるのは避けられません。
ナチュラルカラーの靴クリームでエイジングを楽しんできた自然派の方は避けたほうが良いかもしれません。

ただ色の変化が分かりにくい黒色のコードバンや、靴クリームの補色でも構わないという方は挑戦してみるのも一つの選択肢ではないでしょうか。

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月並みな警告ですが、靴の丸洗い・コードバン脱皮はあくまで荒業・荒療治であるため補修は自己責任でお願いします。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。