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【機材】RAN Guitars Crusher 7の橋渡し人になりて。

(この記事は約12分でお読みいただけます。)

 

 

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RAN Guitarsが私の家にきた、そして旅立った。

 

 

 

BlackWater購入から早4ヶ月。

www.satanokoe.com

某オークションにて図らずとも落札してしまい、RAN Guitars Crusher 7という大変珍しいギターが我が家に届きました。

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が、数日使ってみたものの個人的な好みとは少々異なるものだったのですぐに手放してしまいました。

以前投稿したBlackWater同様なかなかお目にかかれない楽器なので、このギターの特徴を書き残していきたいと思います。

 

長編になってしまいましたので、お茶でも片手にご覧いただけましたら幸いです。

 

 

 

 

 

  

 

 

RAN Guitars

ranguitars.com

MayonesやSkervesenなどなど、コレクター御用達のハイクオリティメーカーが並ぶ国ポーランド。
同国に1991年から開設されたのがRAN Guitarsです。

彼らの信条は「繊細な技術最高品質の素材で唯一無二の楽器を提供する」という事。
公式Facebookの「one of a kind」が強調されている事からも、内なるアツき思いを垣間見る事ができます。

ja-jp.facebook.com

日本国内ではあまり名を馳せてはいないものの、昨今の需要に合致したルックスと、驚異的な工作精度からSNS一部界隈からは根強い人気があるようです。

気になった方はぜひギャラリーを覗いてみてください。

Ran Guitars photo gallery

 

 

さてさて。

触れるか迷った部分ではありますが、2019年現在はトラブル続きのようです。

sevenstring.org

事業拡大のための移転を目論んでいたものの、新天地の取り決めで合意を得ておらずトラブルに。
その結果銀行から借りた資金を返却する羽目になり、資産・資本が枯渇し楽器の製作も手がつけられない状態との事。

しかし時は残酷ながら、オーダー納期は刻一刻と迫ります。
異変を感じたクライアントからの問いかけには返事をよこしてくれないと多々書き込みを見られるようになりました。

そんな良くない噂を聞きつければ新規で依頼をする人も、頭金を入れてくれる人も減り...と良くないスパイラルに陥っているようです。

なんとか解決策はないかと模索しているようですがどうなるか。

一刻も早い復帰を願うばかりです。

 

 

 

RAN Guitarsが私の家に届くまで

手に余るハイエンドを何本も所有していながら、日課となっている某オークションやReverbを眺める毎日。 

そんな最中に見つけたのが某オークションに流れるRAN Guitarsでした。
(画像は終わってしまった後のスクショですが。)

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要らないけど気になる...!

スペックにもよりますが中古相場は約25~30万とかなりの高価格の中、およそ60%の価格スタートで70%程度の価格で即決できるような設定がされていました。
安すぎませんか!?

 
息を吸うようにウォッチリストにイン。

値段が値段ですし、いずれどなたかが入札・即決して「うんうん、そりゃ入札するよね。御縁がなかったよね。」と自らに言い聞かせるための愚行です。
買うつもりはないけどウォッチリストに入れて観測する事は誰しもあるはず。

寓話”酸っぱい葡萄”さながらの合理化による諦めを内心求めてはいたものの、寝ても覚めても誰も入札しません。
これでは諦めきれないではないか。


オークション期日が迫ったある日、出品者にこんな質問が来ていました。

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ほーん、なるほどね?(内心ホッとしている)

 

それなら私が入札だけしておいても、この質問者さんが即決してくれて見事に「仕方がないね。」と諦める事ができます。やったね。

内心と行動がガバガバになっているなぁと笑いつつ最低金額だけで入札します。

 

その結果がコレです。

 

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誰からの入札もなく落札しちゃいました。
なんでだ。

 

某フリマアプリM社でも多々見かけますが、取り置きをお考えの方のドタキャン率すさまじくないですか!?
質問者さん、そういうところやぞ...!

 

程なくして我が家に到着。

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現物かっこよき...!
正直買うつもりもなかったギターですが、やはり届くと嬉しいものです。

 

 

 

 

 

スペック

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スペックは以下の通りです。

トップ:ウォルナット(フラットトップ)
フィニッシュ:オイルフィニッシュ
ボディ:マホガニー
ネック:5ピース(メイプル+ウェンジ)
指板:エボニー?(サイドポジションLuminlayインレイ)
ピックアップ:Bare Knuckle Juggernaut(Neck)、Lundgren Black Heaven(Bridge)
コントロール:3way、1Vol、1Tone
スケール:25.5インチスケール
フレット:ニッケル

 

写真を交えながら詳しく見ていきましょう。

ボディシェイプはCrusher、トップ材は柾目のウォルナット。

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オーダー時にはカーブトップとフラットトップ等が選択できるようですが、こちらはフラットトップ仕様。

厚さは6mm程度です。

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オイルフィニッシュゆえにマットな質感です。
ウレタン塗装のような強い光沢感はありません。

よく言えば落ち着いている、悪く言えば地味とも言えます。

 

ヘッドはボディ同様Crusherと呼ばれるシェイプでマッチングヘッド。
Caparisonを彷彿とさせるトンガリ具合です。当たると痛そう。

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ヘッドロゴはいわゆるMOP(マザーオブパール)の装飾。

ところでこれは何の動物(?)なのでしょう...。
ネコ...?キツネ...?

 

指板は多分エボニー、指板面のポジションマークはありません。

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よく「どこ弾いてるか分からなくならない?」と聞かれますが、慣れればどうという事はありません。

サイド部分にはLuminlayインレイが施されています。

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フレットはニッケル。

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もとは高価なギターだけにステンレスフレットを期待していましたが、到着後に見てみれば見事にくすんでいたのでニッケルだと確信しました。
ニッケルの良さはもちろん知っておりますが、ステンレスの耐久性とヌルヌル具合を体感してしまうと...。

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フレットエッジは丁寧な処理がされていますが、正直もうちょいボールエッジにしてほしく思いました。
素早くスライドするフレーズでは僅かに引っかかって痛いです。

 

スケールは25.5インチ。

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普遍的なスケールながら指板幅が広いせいかやたら長尺に感じます。
指板幅は1Fで47mm、24Fで65mmです。

 

ネックは5P構造です。

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メイプルにローズウッドのサンドイッチという話でしたが、どう見てもローズウッドではなくウェンジです。ローズウッドは多分間違いでしょう。

ネックの厚さは1Fで19mm~12Fで21mm。
他メーカーの多弦と比較すると薄さが際立ちます。

 

ピックアップはBare Knuckle Juggernaut(Neck)、Lundgren Black Heaven(Bridge)をダイレクトマウント。

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界隈の需要からヨイショされがちなJuggernautですが、コシがありバランスよく鳴って心地良いです。
これで弾くクリーンとかうっとりします。

 

ブリッジはLundgren Black Heaven。

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初めて弾きましたが結構な出力ですね。
ギャンギャン歪んでかっちょいい音がでます。

 

ブリッジは安心と信頼のHipshot Fixed。

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コントロールも3way、1Vol、1Toneとシンプルです。

 

ボディバックは綺麗な柾目のマホガニー。

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私の所有するギターほとんどマホボディなのにまたマホガニーです。
もうお互いに惹き合っているいるとしか思えない。

ボディもトップ材と合わせてオイルフィニッシュです。
ウレタン塗装と違って塗膜がほぼないので傷が怖いですね。

キャビティ部分にもRANのロゴがあります。

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フリーザ様の第2形態に見えてきた(?)

 

キャビティ内はこんなかんじ。

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アルミのシールディングは丁寧ですが、配線とはんだ付けは至って普通。
私はガリ無く音が出ればOK派なので、Aristidesほどに美しい配線は望みません。

 

ネック-ボディ接合部は4点固定のセットネック構造です。

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この部分はもはや芸術の域に達する美しさです。

ネックの湾曲からボディにつながる部分は見事なツライチ。
目を閉じて触れればネックとボディの境目はまったく分からないレベルです。

 

ペグはSchaller M6 Locking。

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私の所有するギターはすべてロックペグですが、これを使ったら通常のペグには戻れません。
Guthrie Govanも「安定したチューニングに大事な要素は、しっかり固定してくれるペグだよ。」とどこぞのインタビューで答えていたのを思い出します。

 

以上がスペック詳細です。

以前購入したBlackWaterと比較してそこまでギラついてはいない外見ですが、そのスペックは見事にナウいものではないでしょうか。

 

 

 

プレイアビリティ

お次は演奏性についてです。

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面取り加工されているとはいえフラットトップなので肩周囲のプロトラクトは避けられませんが、深めのコンターカットが入っているので違和感少なく構えることが出来ます。

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なによりこのギターの魅力はハイフレットの弾きやすさ。

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先述のとおりネックとボディは滑らかにつながっているうえ、カッタウェイも深めに設けられているので24フレットを使うフレーズでもすんなり指が届きます。

気になる点は、幅広の指板幅。

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幅広ゆえに私の手ではロックフォームは握りにくく感じました。
ロックフォームとクラシックフォームをせわしなく行き来するフレーズではちょっと大変かも...。

 

ネックシェイプはDシェイプでしょうか。

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顕著なDシェイプではなく、Cに限りなく近いDシェイプと想像いただくとわかりやすいかもしれません。
流行りの非対称ネックのような変化球で来るかと思いきや、普遍的なシェイプで安心しました。

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ネックの薄さも相まって過去に所有していたIbanezのJ.Customを思い出しました。懐かしい。

 

こちらのRAN、生鳴りは気持ちが悪いくらいにありません。
しかしアンプに繋いでみると強烈なサスティーンに驚きます。

「生鳴りはボディ・ネックにエネルギーを分散させて弦鳴りを減衰させてしまう。ゆえにボディやネックが揺れなければ弦鳴りは減衰しないのでサスティーンも続く。」と有名な工房の方が仰っていましたが、その最たる例を確認した気がします。

 

コントロール部は普遍的な配置なので特に問題ありません。

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ブレードスイッチの個体ばかり触れていたせいか、トグルスイッチの固さに一瞬驚きましたがすぐに慣れました。
むしろスイッチ感が強くて好きかも。

 

以上が演奏性についてでした。

細部までルシアーのこだわりを感じられる一本です。
比類を見ない工作精度や薄めのネックシェイプ、ハイフレットまでストレスレスに届く構造は万人受けする事間違いないと思います。

 

 

 

RAN Guitarsの橋渡し人

使っていくうちに気になる部分も慣れていくだろうと思いつつ数日使ってみましたが、指板幅とフレットエッジ処理、生鳴りの無さがやはり好みとは違うものでした。

なんなら7弦はRegiusを既に所有しておりますので、RANの出番がなかなか来ない事は明白です。

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オイルフィニッシュゆえに傷もつきやすい。
自宅保管で状態が悪くならないうちにすぐに手放す事を決意しました。

 

幸いにも購入時の価格が安価であったため、買値と同値ながら購入希望される方を募ったところすぐに見つかりました。
SNSさまさまです。

 

早々に次のオーナーさんの元へ旅立っていくRANさん。

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「迷う理由が値段なら買え、買う理由が値段ならやめておけ。」でいえば後者であった今回の買い物ですが、貴重な個体を触れられただけでも収穫のあった有意義な数日間でした。

 

 

 

 

 

あとがき

以上、大変珍しいギターRAN Guitars Crusher 7の特徴でした。

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比類を見ない工作精度や薄めのネックシェイプ、ハイフレットまでストレスレスに届く構造は万人受けする事間違いないと思います。

気になる点があって今回は手放しましたが、「気になる」といっても極めて僅かな程度ですので決して悪い解釈はなさらないでください。
私の手元にRegius 7が無かったならば間違いなく手元に残しておいた一本でした。

 

そうそうお目にかかる事はないですが、機会があったらぜひ弾いてみてください。
そして宜しければどんな印象だったかを私に教えてください!

ranguitars.com

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。