秋の空 露をためたる 青さかな
なるほど...。
たしかにそんな句を詠みたくなるのも分かる秋空である(わかってない)
あれだけ暑かった夏が嘘のように過ぎ去り、朝晩は涼しい日が多くなってきました。
寒くなるほどに温かい飲み物に需要が傾きます。
冬に向けてたくさんのコーヒーを購入した私ですが、今年はコレを消費しなければなと考えていました。
そうです、紅茶です。
自分で買うことがあるほか、法事などで頂く事があったりと結構な量が溜まってきました。
ただ正直言ってパックはあまり美味しくない...。
喫茶店で飲むとあれだけ香り高くて美味しいものなのに、パックで入れた紅茶は渋くて香りのないものです。
しかしメーカーさんが悪いわけではなく、そもそも入れ方が間違っていたようです。
その方法がパックをレンチンするという方法。
斬新ではありますが、素人でも美味しい紅茶を簡単に淹れる事が出来るのです。
事の発端はドラマのワンシーン
事の発端はオーストラリアのドラマ「ブロードチャーチ -殺意の町-」です。
主人公が水の中に紅茶パックを放り込みそのままレンジでチンするというワンシーンがイギリスの新聞サイト「Mail Online」で物議を醸しました。
画像引用:Mail Online
パックにお湯を注いで抽出する事がベストだと思っている方が多い中で、「紅茶をレンジでチンするのは何事か」とお怒りの声が多かったようです。
「ミルクティーを作る時には紅茶が先かミルクが先か」で論争が起こるように、彼らの紅茶に対する熱量は生半可な物ではありません。
もちろんジョーク主体の論争ではあると思いますが、なんともイギリスらしい話題です。
個人的には美味しく淹れられるのならなんでも良いのでは、と思う次第ですが...。
こんな事言ったら怒られそう(?)
紅茶の科学
淹れ方の議論はさておいて、このレンチンで抽出する方法は科学的根拠にかなっているようです。
紅茶は、ポリフェノール(カテキン類、テアルビジン、テアフラビンなど)という渋み成分、カフェインという苦み成分、ビタミン・アミノ酸・無機成分などの旨味・甘み成分によって構成されています。
これらがいかにどれくらいお湯に溶け込むかによって味に変化が生まれます。
愛知県食品工業技術センターの『紅茶飲料のクリームダウンの生成要因について』という研究では、湯温により紅茶成分がどれほど抽出できるかが掲載されています。
茶葉はウバ。
結果は温度が高いほどに成分が抽出されるという事を表しています。
およそ10分くらいで飽和状態に達し、変化は右肩上がりからフラットに近くなります。
AllAbout『科学でみる美味しい紅茶』でも同様の実験をしています。
注ぐ温度によってどれくらい成分が抽出できるかを実験しているものですが、温度が違う事はもちろんですが、「低い温度では抽出時間を3~6時間、高い温度では抽出時間を2.5分」と抽出時間が一定ではありません。
対照実験として条件がブレてはいるものの、温度が高いほうが成分が多く出ている事は間違いないようです。
熱湯を注いでも室温やカップ温度、紅茶パック温度によって湯温はあっという間に下がっていきます。
つまりは抽出される成分も減っていく事になります。
これを抑制するのがレンジでチンするという方法。
レンチンによって高い湯温のまま維持する事ができ、成分抽出は短時間でも効率の良いものとなります。
実際に作ってみた
まずはお湯を沸かします。
先述の通り、熱いほど紅茶成分が抽出されるので沸騰させましょう。
その間に紅茶パックのホチキスを外します。
ちなみに今回はリプトンのアールグレイを使用します。
面倒だから良いか~ってそのままレンチンしたら火花が飛び散ります(経験済み)
危険なので必ず外しましょう。
後日談ですが、ホチキスを外すと茶葉がパックから出てしまうのでパックの口を結んでおくと良いかもしれません。
お茶の葉がこぼれた時には掃除は面倒ですし、味は渋すぎて気絶しそうになるしで大惨事です。
閑話休題。
紅茶パックをカップにインします。
そこに沸騰したお湯を注ぎます。
このまま電子レンジでチン。
先のグラフでは10分で抽出は飽和状態に達します。
しかし旨味成分と共にカテキンやカフェインといった渋み成分も多く抽出される事になるのでここは好みです。
私は200Wで30~60秒が好みでした。
600Wでグラグラ沸騰するほどに加熱してみた際にはエグみが出たので、茶葉を動かし過ぎるのもあまり良くないのかもしれません。
ここらへんもグラフや研究結果が欲しいですね。
レンチン後はそのまま60~180秒ほど蒸らします。
通常細かい茶葉は短く、粗い茶葉は長めに蒸らすようです。
あとは紅茶のパックをそろーっと取り出します。
スプーンで茶葉を押し付けたりするとこれまたエグみが出るのでそろーっと外しましょう。
これにて完了です。
心無しかいつもの淹れ方よりも彩度の高い、喫茶店で出てくるような赤色になりました。
余談ですがこの色はテアフラビンとテアルビジンという成分がよく出ている証拠のようです。
期待が持てます。
今まで飲んでいた渋い紅茶は何だったんだ
鼻に近づけた瞬間に通常の入れ方とは異なる香りの変化に気が付きます。
口に入れれば香りが一気に広がって後からコクと旨味が追いかけてきます。
飲み込んだ後まで香りが鼻腔に残る感覚です。
私があまり好ましくなかった舌がキュッとなる過度な渋みもほぼありません。
淹れ方が違うだけでこうも変化するものかと正直感動します。
今まで飲んでいた渋い紅茶はなんだったんだ...。
手順の再確認
あらためて手順を確認しましょう。
- 紅茶パックのホチキスを外しカップに入れる
- 熱湯をイン
- 200Wで30~60秒チン
- そのまま60秒~180秒放置で蒸らす
- カップから紅茶パックを外したら完成!
お湯を注ぐだけよりも面倒である事は間違いありませんが、待つ時間多めなのでそこまで苦ではないでしょう。
なおこれらの時間は茶葉の種類や茶葉のサイズによって大きく異なります。
試行錯誤しながら自分好みの時間を探していただけましたら幸いです。
ちょっとした手間でこれだけ味が変化するなら、やってみる価値はあると感じます。
それこそ家にゲストを招いた時には重宝する方法ではないでしょうか。
コーヒーが苦手で飲めない...なんて方も多いですからね。
さてさて。
今の季節は、秋の夜長とも言いますし、読書の秋とも言います。
夜に読書でもしながら美味しい紅茶を楽しむのも、風情があって良いのではないでしょうか。
美味しい淹れ方を見つけたら是非私にご教授ください。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。