革靴のクラック。
履きシワが深く刻まれていった末に破けてしまうこの現象。
クラックがさらなるクラックを呼び、耐久性を著しく悪化させるとともに見た目も非常に悪くなってしまいます。
以前Twitterにて「補修してみたよ!」と投稿した際には多く反響いただき、記事にしてほしいとリプライいただきましたので記事に残したいと思います。
徐々に革製品補修系ブログにシフトしている気がしないでもないですが、気にせずいきましょう...(笑)
今回は「靴棚で眠っていた靴を直して欲しい。」と渡されたこちらの靴を、タイトル通りお安く補修していきます。
クラックの発生原因
歩行時の足関節・足部の動きはとても複雑で、効率良く動くために大きな関節運動が生じます。
この際に靴のアッパーには履きシワが入っていきます。
(興味のある方は「ロッカーファンクション」と検索していただけると面白い記事や論文が出てきます。)
適切なケアを行なっているレザーは栄養分でしっとりしており、シワが入っても弾力があるため跡が付く程度にとどまります。
また、革靴を脱いだ後にシューキーパー を入れることでシワが伸ばされます。
しかしケアをされていない乾燥したレザーでは曲げ伸ばしストレスに耐えきれず、履きジワ部分を中心に裂けてしまいます。
これがクラックです。
つまりは乾燥したレザーがクラックの原因になるわけですがやりすぎたケアも原因になります。
靴クリームを塗布後に余分なクリームを拭ききれていない場合、砂やゴミが靴に付きやすくこれだけで乾燥しやすい状態になります。
帰宅後にブラッシングが推奨されている事にもつながります。
「いつまでも革をしっとりさせたいからあえて拭かない。」という方もいらっしゃるようですがむしろ逆効果です。
ネル生地で乾拭きした際に何も着かないくらい磨き上げるのがベストです。
クラックの補修方法
いざクラックが起きてしまった場合には補修方法がいくつかあります。
1.ヤスリで削る
クラック部分をヤスリで削ることでごまかす方法です。
これは極めて浅いクラックの場合には有効ですが、深いクラックの場合にはまったく効果がありません。
実践された方のブログが大変わかりやすかったので貼らせていただきます。
私も過去に試したことがありましたが、非常に美しく治ります。
2.パッチ補修
裂けてしまった部分の上から同色のレザーを裁縫する方法です。
プロの方にお任せしなければならない為、少々お値段・時間がかかりますが一番美しく仕上がる事は間違いないです。
一部にパッチをつける「チャールズパッチ」、クラックの発生した革をまるまる交換する「ブリフトパッチ」があるようです。
(↑2018年4月現在閲覧できないようです。ブログ内のデザイン設定を間違ってしまっている説が濃厚です。)
ブリフトパッチはもはやパッチとは呼べないかもしれませんね...(笑)
3.パテ等で埋める
深い穴をアドベース等で埋め、上から補修クリームを重ねる事で誤魔化す方法です。
かかる費用はパテと補修クリームだけなのでそこまで高価ではないのでしょうか。
今回は「深いクラックお安く補修する」というタイトル通り、こちらのアドベースにて補修していきます。
実際に補修する
現状確認
さっそく補修す前に現状の確認からしていきましょう。
さきほど登場したこちらの靴。
履きジワを中心に深いクラックが入っています。
写真では見にくいのですがこんな状態です。
革の表面が裂けています。
その他つま先にはひっかけたような深いキズも見られます。
準備
必要な物は以下の通りです。
- ハサミ
- アドベース
- ヤスリ
- サフィール補修クリーム
- 一般的な靴メンテナンス用品(リムーバー、靴クリーム、ワックス)
補修工程
1.汚れを落とす
まずはブラッシングとステインリムーバーで汚れを落とし、革の表面がペロッと剥がれている部分はハサミで綺麗に切ります。
剥がれた革は指で引っ張って取ろうとすると被害が広がってしまうので、必ずハサミ等の刃物で切ってください。
革がガサガサの場合はこのタイミングでデリケートクリームを塗布しても良いと思います。
今回は革の乾燥が目立っていたので使用しました。
2.アドベースでクラックを埋める
次にクラックや傷の目立つ部分をアドベースで埋めます。
クラックの溝を埋めるようなイメージで塗り込みます。
後にヤスリで削るのでこんもり盛ってしまって問題ありません。
アドベースが白色なのでやってしまった感が強いですが大丈夫です(笑)
後に補修クリームと靴クリーム・ワックスでいくらでも誤魔化せます。
30~40分乾燥させると完全に固まります。
3.ヤスリで整える
アドベース乾燥後、ヤスリで表面を整えます。
溢れたアドベースの凹凸や革の膨隆が平らになるように削ります。
240番→400番くらいまでのヤスリがけで十分整います。
さらなる光沢感を求める方は3ミクロン以上の研磨をお勧めします。
靴クリームのロウ成分とワックスの薄塗りでも簡単に鏡面まで到達します。
番手 | ミクロン |
320番 | 60 |
400番 | 40 |
600番 | 30 |
1000番 | 16 |
1200番 | 12 |
2000番 | 9 |
3000番 | 5 |
4000番 | 3 |
6000番 | 2 |
8000番 | 1 |
15000番 | 0.3 |
4.補修クリームを塗布する
次にヤスリをかけて整えた面にサフィールの補修クリームを塗布します。
今回は靴の色にあわせて黒をチョイス。
私のブログではたびたび登場する「補修クリーム」ですが、これが非常に良いのです...!
いかがでしょうか。
徐々にクラックが目立たなくなってきました。
5.通常通りのメンテナンス
あとはいつも通りのメンテナンスを実施するだけです。
靴クリームで磨いて...。
ワックスの薄塗りでごまかす。
近寄るとクラックだとバレてしまいますが、ちょっと離れてしまえばシワにしか見えない程度になりました。
オマケにワックスで鏡面磨きを施します。
鏡面磨きは以前の記事と同じ方法にて行いました。
完成!
ビフォーと比較。
最初の裂けから比較すると目立たなくなったのではないでしょうか。
つま先の傷もそれなりに誤魔化せました。
深い傷はもうちょいアドベースで埋めても良かったかもしれません。
あとがき
靴はいつか傷やクラックが起きるものです。
排水溝のフタ(グレーチング)につま先を引っ掛ける事もあれば、使用しない期間にホコリで乾燥して割れてしまう事もあります。
その度にパッチ補修していたらキリがありませんし、キズを放置するのも見栄えが良くありません。
そんな時に安価で簡易的に補修できる方法として、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
美しい靴は気持ちが良いものです...!
最後までお読みいただきましてありがとうございました。