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以前こんな記事を投稿しました。
今後いつになるかわかりませんが、巷で流行っているスタビライズドウッドを簡易キットで製作できる算段がつきましたので、挑戦してみたいと思います。
半年の時間を経てついに道具が揃いましたので、スタビライズドウッド製作に挑戦してみました。
斬新な試みとして製作記をブログに残しておきます。
楽器ルシアーの皆様はじめ、小物DIYにハマっている皆様の参考になりましたら幸いです。
スタビライズドウッドとは
スタビライズドウッド(Stabilized Wood)
真空含浸を用いてレジンを木材深部まで染み渡らせ、硬化させた素材の事です。
硬化したレジンの強度も相まり、木材強度はぐーんと上がります。
バール材のようなもろい木材の安定化にも最適ですね。
着色したレジンを使用する事で独特な色味を付与する事も可能です。
最近ではこのスタビライズドウッドを利用した、ペンブランクや電子タバコ用MOD、ギター等まで製作されているようです。
FacebookやInstagramをよく見る方ならご存知かもしれませんが、Kieselでも多々扱っているようです。オーダーも受け付けているのかな。
Kieselは自社製作ではなくCalifornia Woodsで仕入れたスタビライズドウッドを使っているようですが。
一目見たら瞼に焼きつく美しさ。
木目フェチ(?)には堪らない素材です。
なんとか自宅で作れないものか
製作している動画を見ていると、どれも工房・工場で大掛かりな真空装置を使って製作しているのが一般的です。
なんとか自宅で作れないかと方法を考えておりましたが、一つ良い案を思いつきました。
真空保存容器でなんとかなるのでは...?
そこまで強い真空状態にはならない気もしますが、木材への含浸程度ならいけそうな予感。
道具も比較的安価ですしダメでも汚れても諦めがつくものです。
思い立ったが吉日。
挑戦してみようではないですか。
準備した物
- 真空ポンプ・真空保存容器
- レジン
- レジン用顔料・ステイン等の着色物
- アルミカップ
- 木材
先ほど登場しました真空保存容器・ポンプ。
よく見る家庭用のものです。
容器側はよごれないように底面にアルミを敷き、マスキングテープで固定しておきます。
レジンは前回も登場した太陽の雫(UVレジン)を使用。
ここで懸念点がひとつ。
仮に木材にしみ込んだとして紫外線で深部まで固まるのだろうか...。
アルミカップは真空容器が汚れないように使用します。
本当はもっと分厚くて強度のあるアルミ容器が良いかもしれませんが、コスパ重視で製作します。
今回使用する木材はキルトメイプル6mm厚。
製作手順
まずはレジン液に顔料で着色をしていきます。
淡い紫色にしてみました。
これをアルミカップに注ぎキルトメイプルを浸していきます。
真空容器に入れ、ひたすらポンプで空気を抜いていきます。
およそ300回ほどポンプを引きました。
木材からブクブクと気泡が出てきていますが、これはレジンが染み込んでいるという事でいいのかな...?
このまま10分ほど放置し、裏返して同様に真空含浸を実施。
取り出してみるとこんな感じに。
紫色はいずこへ!?
もっともっと濃い着色でも良いようです。
着色に満足いかなかったので、オマケにもう一つ製作してみることに。
素材は同じくキルトメイプル。
先ほどとは異なり、荒く縦割りした薄めの素材です。
今度は着色に顔料ではなく木材用の青ステインを使用します。
ステイン2:レジン1くらいの比率で混ぜてみました。
先ほどと同じ工程で製作してみるとこんな感じに。
奥行きのあるとても良い色に仕上がりましたが、色ムラが起きてしまいました。
レジン液とステインは相当良く混ぜないと分離してしまうようです。
溶けないから攪拌というべきか!
配合比に問題があったのか、真空容器から出した後に木材表面がひび割れてしまいました。
あとは裏側までよく着色しきれていなかったり。
これはレジンの浸透が起きていなかったのではなく、青ステインと分離してしまった透明のレジンのみが浸透してしまっているようです。
ここから2液レジンなら「レジンを含んだ木材をオーブントースターで温め硬化促進する」なんて工程へと進むのですが、UVレジンなので日光の下で硬化を待ちます。
およそ10日くらいでしょうか。
日光の当たるところで十分な時間を置きました。
すごい木目!
表面の感触はカチカチです。
磨いてみるとこんな感じになりました。
この濡れたようなツヤ感。
スタビライズドウッドで検索すると出てくるようなものにはなったかなと思います。
青ステインを混ぜたレジンのほうはこんなかんじに。
これはこれでありなのかな...!
やはりステインの染み込み具合にムラがあったようで、磨くほどに色が落ちていく部分がありました。
後日談。
スタビライズド材を半分に切ってみたのですが、深部までレジンは染みているものの完全には固まっていませんでした。
やはりUVレジンの場合は紫外線が当たる表面側だけ硬化するようです。
この問題は主剤と硬化剤の2液に分かれたレジンであれば解決しそうですね。
まとめ・あとがき
真空保存容器を用いてスタビライズドウッドを試作してみました。
- 真空度合
- 含浸時間
- レジン液の選択
- 着色剤の配合比
- 素材の厚さ
などなど考慮する点は多くありますが、簡易的な真空容器でもなんとか製作可能なようです。
活用方法の1案ですが、先日トラスロッドカバーを作りました。
こういった「これ以上加工しないもの」に強度や光沢を付与するならUVレジンの含侵で十分事足りると思います。
「まだ作るものが決まっていない、削り出しながら考えたい。」という方は、2液レジンで深部までカチカチに固めてからがいいように思いました。
今回は表面しか固まらないという腑に落ちない形になってしまいましたが、スタビライズドウッドは固めてからの加工が楽しいところ。
2液ウレタンで挑戦した際には改めて製作記を更新する予定ですので、楽しみにして頂けましたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました。