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追加料金のかかるレンデンバッハでオールソールしてみた

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手を加えるほどに味がでて、手の加え方によっても風合いが変わる。

 

革靴の魅力に取りつかれて以来、身分不相応とは思えど良い品を手にしてはケアをしながら楽しんでいます。

しかしいくら手入れをしながら大切に着用していても、いずれ限界を迎える部分があります。

それがソール部分です。

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どこまで高級でも靴は靴ですので、歩いていれば石畳でゴリゴリ消耗していく事は避けられません。

穴が開きそうになってきたのでハーフラバーで補強(ごまかし)を施しましたが、それももう限界のようです。

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ベ コ ベ コ 。

 

ここまで消耗してくるとオールソールをするほかありません。

すぐにでも修理依頼をしたかったので近くの靴屋さんに依頼する事に。
そしてせっかくオールソールするなら少々お金がかかっても試してみたい物がありました。

その名もレンデンバッハ

オールソールの中でもアップチャージ(追加料金)がかかるものですが、こだわり派の方々も絶賛するレンデンバッハの魅力に迫るべく奮発してみました。

 

 

 

 

 

 

 

レンデンバッハとは

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参考:Joh.Rendenbach.jr

正式名称はJoh.Rendenbach.jr(ジョー・レンデンバッハ)。
ドイツのタンナー(なめし革業者)の老舗です。

 

創業者はJohann Rendenbach Jr.(ヨハン・レンデンバッハ)。
1871年にドイツとルクセンブルクの国境付近の都市トリールで創業したのが始まりです。

▼ドイツ・ルクセンブル間

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▼トリール

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参考:Google Earth

 

現在は大量生産の効く「クロムなめし」が採用される事が多いなか、レンデンバッハは伝統的な「タンニンなめし」の手法を守っています。

その手法によってつくられるのがオーク材のタンニンに9~12か月付け込み乾燥させる、オークバーグと呼ばれる最高品質の革です。

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参考:Joh.Rendenbach.jr

風合い最高か...!
こんな手間のかかったオークバーグ材を靴底の素材として使用するとはなんと贅沢な事でしょうか。

 

ちなみにデフォルトで靴底として採用されているのは、SAINT CRISPIN'S(サンクリスピン)、Crockett&Jones(クロケット&ジョーンズ)のハンドグレードライン、HEINRICH DINKELACKER(ハインリッヒ ディンケラッカー)です。
たしかVASS(ヴァーシュ)も一部ハイエンドラインであった気がする...。

どれも日本円では10万を軽く超えてくる高級靴ばかりです。

 

 

 

そもそも”なめし”とは

革で包むと書いて鞄(かばん)、革が化けると書いて靴(くつ)。
では革が柔らかくなると書いて...?

そう、鞣し(なめし)です。

 

鞣しについてあまりに良い説明をされている方がいらっしゃったので引用させていただきます。

(引用開始)

ある時、炉の近くに置いた皮から血のにおいが消え、腐りにくくなることを知った原始人は、煙で原皮を燻すようになりました。これは最古の鞣し技術と言われる燻製なめしです。

こうして「皮」は「革」へと変貌していきます。

そして原始から古代に時代が移り、動植物の油を塗りこむことで皮が柔らかくなることを知った古代人は、なめしに動物性油脂やナタネ油を用いるようになりました。

さらにある時、倒木に寄り添って死んだ動物の皮が腐りにくいことに気づいた古代人は、草木と一緒に漬け込むことで皮がさらに柔らかく、長持ちすることに気づきます。
タンニンなめしの基礎とも言える植物エキスを用いたなめし技術の誕生です。

 

 

動物からはぎ取った皮は血生臭くそのままでは腐ってしまいます。
かといって乾燥させてしまうとゴワゴワで固くなってしまいます。

試行錯誤のすえに辿りついたのが、草木の液に付け込んで皮を柔らかく固くなりにくくする方法です。

(引用終了)

引用:輝けライフ!

鞣しとは、”皮”が”革”となる工程の事を表します。

ただ単に「革が柔らかくなる」と書くものの、そこには試行錯誤のすえに生まれた先人の知恵と技術がたくさん詰まっているのですね。

 

 

閑話休題。

話は戻りますが、レンデンバッハのオークバーグは、その名の通りオーク材の渋(タンニン)を使用するいわゆる「タンニンなめし」を採用しています。
さらにはタンニンなめしの製作手法も古くからの伝統を守っています。

 

地面にピットと呼ばれる穴を掘り、そこにオークタンニンを充填。

そこに皮を9~12か月漬けこませます。
時折皮の状態に応じてタンニンの濃さを変えたり手を加えたりするのだとか。

その結果革の繊維がぎゅっと詰まり、堅牢で削れにくい丈夫さが生まれます。

最後に乾燥させ用途に合わせて加工されて出荷。

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参考:Joh.Rendenbach.jr

靴好きが良く見るこの形となるのです。

レンデンバッハ社製オークバーグは、製作までに1年と恐ろしく手間のかかる革なのです。

 

 

 

レンデンバッハは追加料金がかかる

もうここまでお読みいただければお分かりでしょう...!

手間がかかるゆえに非常に高額です。
それゆえ通常のオールソール以上にアップチャージもかかります。

ユニオンワークスさんではオールソール代金+3,000円(税別)、その他お店でもおおよそ+3,000~6,000円くらいのアップチャージが相場のようです。

www.union-works.co.jp

私の場合はオールソール代金15,000円+アップチャージ4,000円で、計19,000円ほどでした。たかい。

靴の修理で約2万。
興味のない方からしたら理解されない出費である事は間違いないでしょう。笑

 

 

 

オールソールが完了した

ものの1週間程度で出来上がったと連絡があり、すぐに受け取ってきました。

先にオールソール前の写真です。

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きったない...。

そしてこちらがレンデンバッハによるオールソール後です。

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いかがでしょうか!
以前の状態が嘘のようにきれいになっています。

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機械縫いなのかもしれませんが、均一なステッチ幅や革の際部分を縫う技術は素人にはできませんよね。

ヒールからソール部の流れもご覧の通りです。

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カッチリなツライチですこしの段差もありません。すき。

 

到着してすぐに磨き直しました。

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こうして手を加えていくほどに愛着が湧いていくというものです。

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こころなしか晴れやかな表情をしているように見えます。
単なる照明の関係ではないと思いたい...。

 

最近のゲリラ豪雨にはめっぽう困りますが、また晴れた日には大活躍してくれる事でしょう。

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重厚な履きごこち

後日試し履きをしてみました。

まずファーストインパクトは非常に重厚な履き心地です。

通常の革底以上に重量がある事は間違いありませんが、その分靴の”かえり”が良いため、歩行時の蹴り出す瞬間に程よいサポートをしてくれる事がわかります。

 

そして非常に上品な音が鳴ります。

床地やタイル地に足底部が付いた時にコッと音がなります。

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「カッ」と高い音ではなく「コッ」とか「トッ」に近いような低めの音です(?)

革底の靴は結構数履いておりますが、こんな音の靴は初めてかもしれません。

 

 

またもう一つ気づいたのが、アウトソールが堅牢な分型崩れしにくいように感じます。

履き終わった後に靴を脱ぐと若干沿っていたりするものですが、そんな様子も見られませんでした。

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まぁ結局はシューツリー入れるんですけどね。笑

オークバーグは履きこむほどに馴染んでくるとの事なので、どう変化していくのか非常に楽しみです。

 

 

 

 

Amazon経由でレンデンバッハにしてもらう事も可能

今回私は近くの靴屋さんでレンデンバッハのオールソールをしてもらいましたが、今では日本全国どこからでも依頼する事が可能です。

それがこちら。

Amazonを経由した、ミスターミニットによるオールソールサービスです。

ソールだけでなくヒール部分までレンデンバッハを使用して、往復金額も込みなのに18,900円とかコスパどうなっているんですかね...。

 

過去にミスターミニットでヒール交換を依頼した事がありますので、気になる方はぜひこちらもチェックしてみてください。

www.satanokoe.com

 

もしかしたらこの記事を読んでくださっている方に、大切にしたい一足を手にした方もいらっしゃるかもしれません。

使用するほどに靴底が削れていく事はさけられず、時にはオールソールが必要になる日がいつかくるでしょう。

そんな時に大切な一足をより長持ちさせるレンデンバッハ
ぜひオールソールの際にはその単語を思い返していただければ幸いです。

 

きっと所有欲と愛着を沸き立たせてくれる事でしょう!

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最後までお読みいただきましてありがとうございました。