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コードバンの水膨れやシワを手軽に伸ばしたい。
水分がつけば水膨れ、履いていてもシワが目立ってくる手のかかる素材コードバン。
これら頻発する問題を手軽かつ容易に解決出来るのがアビースティック・かっさ棒です。
今回はアビースティックや、代用物のかっさ棒の使い方について記事にしてほしいとご要望いただきましたので書いていきたいと思います。
革の宝石コードバンの水膨れとシワの発生機序
革の宝石コードバン。
使いこむほどに光沢が生まれ、新品状態との違いを楽しむことができる革です。
しかし水がつけば水膨れしやすくうえ、シワやクラックが出来やすいという手のかかる素材でもあります。
ちょっと湿気を吸っただけでこの有様。
ゴワゴワで光沢感が損なわれています。
その原因は一般的なレザーとの構造的な違いからなります。
通常のレザーは、 「床」と呼ばれる土台に「銀面」と呼ばれる表面が張り付いた2層構造であるのに対し、コードバンは「床」のみを使う単層構造です。
余談ですが、表面を削ってその「床」であるコードバン層を採掘する様子が革の宝石なんて名付けられる理由の一つとの事です。
一般的なレザーではコラーゲン繊維が絡み合っている構造に対し、コードバン層では規則的に縦に並んでいます。
ゆえに横方向への引っ張り強度に弱く、シワになりやすく裂けやすいうえ、水分がつけば縦に並んだ繊維が起き上がって光沢感が薄れてしまうのです。
水滴によって起き上がってしまった繊維は何か硬い物を押し付ける事で再び元に戻すことが出来ます。
推奨されているのはレザーアビィスティックとよばれる水牛の角で出来た棒ですがいかんせん高い。
7000〜8000円て...。
御察しの通りこんな高価のものを選択せずともコードバン表面を傷つけず、なおかつ硬い素材であれば何でも良いわけです。
どういったものが良いだろうかと探してみれば、かっさ棒が適しているというのがコードバンユーザーの見解でした。
かっさ棒で慣らす
かっさ棒はツボ(経絡)に押し当てて使うマッサージに適した道具との事ですが、この繋ぎ目の無い流麗さがコードバンの表面を慣らすにも適しています。
アビースティックと比較しても安価なためか、Amazonのレビューを見ててもコードバンに使用されている方が多数確認できます。
もちろん先述の通り固い物質ならなんでも代用が効きます。
人によっては印鑑の天を使ったり、リップクリームのキャップ部分を使う方も多いようですが、鋭利すぎるとコードバン表面に不可逆性の傷が付くのでご注意ください。
水膨れ・シワを是正する
実際にかっさ棒を使用して水膨れ・シワを直していきましょう。
今回のコードバン表面を慣らしていくのはALDENのコードバンチャッカブーツです。
雨天は避けて使用していたものの、湿気を吸って水膨れがいくつか。そしてシワが目立ちます。
どこまで綺麗になるでしょうか。
まずは準備としてシューキーパーを入れシワを伸ばします。
省略しがちなシューキーパーですが、作業中の型崩れを防ぐという意味でも大変効果的です。
いよいよかっさ棒でコードバン表面を慣らしていきましょう。
左右差を比較するために右足側に集中して施行していきます。
コードバンは単層で強靭とはいえ、かっさ棒を"点"で当てると痕になってしまうので、"面"で押し当てて擦っていきます。
押力は200-300g程度でしょうか、結構強めに擦っても問題ありません。
擦ったところは白く濁ったような跡になりますが、後ほどブラシをかければ消えるのでご安心を。
水膨れやシワの気になるところを重点的に擦っていきます。
コードバンユーザーのなかでは専ら「ゴリゴリ擦る」と表現されるのですが、あながち間違いではありません(笑)
水膨れ・シワが目立たなくなったら完了です。
あとはブラシをかければ白い痕が消え、光沢感が蘇ります。
左右同等だったはずの水膨れ・シワは施行した右側のみ綺麗になりました。
もちろん反対側も実施。
あとはいつも通りの靴クリーム・ワックス等のケアを施行すれば終了です。
水膨れ・シワが目立った最初と比較すればまさに雲泥の違い!
コードバン製品を手入れする醍醐味はここにある気がします。
あとがき
手軽に出来るという点ではこれ以上ないくらいの方法です。
いつものケアの前にコードバン層をならすだけでこれだけ顕著な差が生まれるのならやらない手はないでしょう。
シワが伸びればクラック(裂け)の起きる可能性も大幅に減らせるので、繊細なコードバンを長く楽しむためにも必須ともいっても過言ではないでしょう。
今回は靴で実施しましたが、コードバン素材なら財布でもランドセルでもなんでも可能ですので是非お試しください。
なお、この方法で是正できる水膨れ・シワは軽度〜中等度のものです。
あまりにコードバン表面がガタガタの場合には「コードバン脱皮」という荒業もありますので、状態に応じて使いわけるのが良いのではないでしょうか。
もちろん荒療治ゆえ、推奨はされない方法ですので自己責任でお願いします。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。